プリンキピア続編陽電子−中性子仮説(同重体理論)>序章 問題点の導入

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原子番号の謎

元素は原子量の増加にしたがって、化学的、物理的に性質の周期性がある。メンデレーエフ(Dmitri Mendeleev, 露, 1834-1907)はこの特徴に気付き、「周期表」を作成した。原子番号とはその名のとおり「周期表」における順番あるいは位置を表わしたものである。元素の化学的,物理的性質の周期性を表すのは原子の最も外殻の電子数であるが,共通した内殻電子の導入によって推定した総電子数は意外にも元素の「周期表」に置かれる「原子番号」と一致した。

科学者達はこの突破に満悦した。つまり,「元素の電子は原子番号の数だけあり,これらはまず内殻を飽和させ,あまった電子は最も外殻に配属される」。元素の化学的,物理的性質は原子の総電荷が如何に関わらず,外殻に配属された電子数によって決まると言うことである。そして,原子の内殻電子が飽和されているから安定であり,化学的,物理的性質には影響を及ばない。すべての回答は明瞭であり,納得できる。

電子の外殻構造が似れば似るほど性質も類似する。加えて、中性原子の中では陰電荷を持つ電子数と同等の陽電荷部分と釣り合って中性原子を作るとの解釈も納得されるようになった。

1906年、ラザフオード(Ernest Rutherford, 英, 1871-1937)がアルファ線散乱実験により、原子の正電荷は非常に狭い範囲に集中していることを発見して、原子の有核構造を提唱した。原子構造は最終的に長岡半太郎の土星型原子模型に定着されるようになった。

しかし、ここにきて科学者達が戸惑い始めた。ドルトン(John Dolton, 英, 1766-1844)によって提唱された「物質を構成するこれ以上分解できない粒子」とされてきた元素は,原子核と電子に分けられ,原子核の核内にはさらに陽子や中性子,中間子などいろいろな粒子が存在するだけでなく,同じ原子番号の元素でも様々な原子量のばらつきも発見された。

例えば原子番号が「1」の水素では、H-1(軽水素、原子量が1である)、H-2(重水素、原子量が2である)、H-3(トリチウム、原子量が3である)などがある。更に,元素と言われたからには,「周期表」に置かれる位置は永久に固定され、性質も不変であり、また,元素同士はお互いに転換できないとされてきた。ところが、これら鉄則とも言うべきの「原子論」の基本の基本はここに来て,ほぼ全面的に否定され,音を立てて崩れるようになった。

元素は人々が想像したように純粋なものではなかった。同じ原子番号の中に異なる原子量のものがたくさんあった。同原子番号を持つ異なる原子量の原子同士のことを同位体と言う。これまで、地球上に110種類の元素の1300核種の原子が発見され、同位体の数は平均12個、中には20個以上同位体を持つ元素も珍しくない。

原子番号」あるいは「原子量」あるいは「エネルギー準位」が異なる原子同士のことを「核種」といい、区別する。例えばH-1核種,H-2核種などである。とは言っても同じ原子番号で冠した同位体核種同士はほぼ同じ性質を示し,地球上では元素ごとに各同位体核種が一定の比例を保って存在している。同位体同士を分離することは非常に難しいため,周期表に採用された各元素の原子量は同じ原子番号の同位体核種の同位体存在度を総合した値である。つまり,

原子量(同位体A)×存在度(同位体A)+原子量(同位体B)×存在度(同位体B)+・・・

原子核は電子の数、つまり、原子番号だけの正電荷を持っている。その正電荷は何に由来されるかという疑問が長い間にわたって論争された。一応として、陽子(水素原子の核)の候補が浮上したが、(陽子は原子核に存在するか否かについては今だにまだ証明されていない!)それはすべての原子の原子量は陽子の質量の整数倍(原子量という)であり、そして原子の電荷も陽子が持つ電荷の整数倍(荷電数という)であることによる。この「整数倍」にはきっと意味があると科学者達に疑問を投げかけた。

元素,物質の根源はたったの陽子でできている。物理学者達の興奮は最高に達した。量子理論の先駆者であるボーアでさえも早速ヘリウムに4個の陽子が含まれているとの構想を立てていたが、計算に計算を重ねた結果,原子量と荷電数が異なるため,原子核に陽子が含まれる構想を確信させるに至らなかった。ボーアは量子論の創始者であるため、科学者達は不服ながらも沈黙を守っていた。

後の1932年に、チャドウィック(James Chadwick, 英, 1891-1974)が陽子と大体同じ質量で、電荷が持たない「中性子」を発見した。この発見は窮地に追い込まれたボーアを救った。いわゆる、折衷型の仮説である「陽子ー中性子説」の提出がようやくみんなの妥協を得られるようになった。

「原子核は電気素量が1の電荷を持つ陽子と、電荷を持たない中性子からなりたっている。陽子の数は原子番号を反映し、不特定の数の中性子の存在によって、原子量の多様性をもたらした」。

ボーアはこの仮説で自分の抱えた最大の疑問を殆ど解けたので、強く主張し、その模型も「ボーア原子模型」として、今でも根強く影響を持ち、物理の教科書などに採用されている。

しかし、かろうじて立てた「陽子一中間子説」の原子核模型はまさにミステリーの固まりである。

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この論文は2001年9月14日付けで文化庁にて第一公開年月日の登録を行いました。(登録番号は 第18418号の1)
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