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周知のように、毎日二回の満潮の間隔は約十二時間であり、これを「半日周期」という。つまり、満潮は地球の自転軸に対称したほぼ正反対の両海域で起きている。片方は外的引力によって持ち上げられると説明されたとしても、その「反対側満潮」については謎のままである。
そこで「吸水説」論者達は、いろいろな仮説を立てて、この「反対側満潮」を解釈し、「吸水説」の正当化を図っている。これまでこの「反対側満潮」に関して、主に「遠心説」と「力差説」が提出されている。
「遠心説」によると、月―地球系はそのあいだにある共通重心の周りを回転するため、地球の反対側に遠心力がかかっている。よって、反対側にも満潮になると言う。
これはまさに地球を宇宙の中心とする「天動説」を無意識に前提としている。月―地球系はそのあいだにある共通重心の周りを回転することは地球と月の相対的位置であり、実際では、図2に示すように、月と地球の公転軌跡から見ると、月はただ単に地球軌道の内側と外側に行ったり来たりするような形をとっており、このような遠心力は生じないことがわかる。
一方、「力差説」によると、月の万有引力が月から遠い程弱くなり、その結果、月側の海水はより大きく月側に移動し、地球本体は中くらい移動し、月の反対側の海水はあまり移動しないと主張する。そのため、移動した地球本体に対して、反対側の海面の水位が上がったことになる。
この仮説は引力側の海水と地球そして地球反対側の海水を完全に分離した質点体系と見なし、地球の引力を無視する空想に過ぎない。そもそも、地球上の海水はつながっており、そして、地球の重力の支配により、水と水の間にわずかのポテンシャル的な差があった場合に、それを無くす力が働き、海全体のバランスを維持している。また、海全体の質量は地球の質量のわずか0.02%しかなく、海の厚さも最も深いところでも地球直径の0.1%に過ぎず、引力側の海水、地球本体、引力反対側の海水を三つの質点に分割することがナンセンスである。
更に、万有引力は質量と比例し、距離の二乗と反比例するので、地球の質量は月の約80倍あり、地球の半径(地球と海面の距離)は6350キロに対して、地球と月間の距離(月と海面の距離)は384000キロである。月に対して、地球の引力側、地球重心、引力反対側の位置変化がわずか0.5%に過ぎず、月引力が地球引力を無視して、この三点に対してコントロール力に違えがあるとはとうてい考えにくい。
いずれにせよ、このような仮説はどれもが月引力のみを意識して提出したものにすぎない。しかし、潮汐に関連する外的引力に太陽引力も含まれていることを忘れではいけない。周知のように、太陽引力にも地球の反対側に同じような潮汐効果をもたらしている。この点に関して、以上のいずれの仮説でも全く無力である。 |
図1 吸水説 |
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図2 月軌道の説明図 |
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