潮汐の真のメカニズム > 第四章 「延径効果理論」の検証および応用

前のページ | 次のページ

八丈島の新月、満月、上弦、下弦の潮汐研究

上弦グループと下弦グループの延径効果の特徴

 上記のように、新月グループと満月グループの干潮水位におきる邱潮の年間挙動は,太陽引力の方向変化によって推測する地球の延径効果と一致し、当延径効果理論の正確性が確かめられた。しかしながら、新月グループと満月グループにおける太陽と月が引き起こす地球の延径効果は重ねたため,それぞれの引力特徴やそれにより引き起こす邱潮の特徴などの挙動を解明することができない。よって、両引力を分解する必要がある。

図408 上弦説明図 図409 下弦説明図

 上弦時(図408)と下弦時(図409)では、地球に対する太陽引力と月引力はほぼ垂直の方向にあるため、両外的引力のお互いの重なりは最小にとどまる。また、隣接二回の上弦(図410)或は下弦(図415)では、太陽の方向に合わすのに、両引力とも地球に対する方位が一ヶ月前に比べて,約30°逆時計回りを移動することになる。その結果,一年間の上弦グループ及び下弦グループの月の方位を総合すると,両引力は垂直のままで、地球の周りにある各方位を経歴したことになる。
 よって、これら上弦グループおよび下弦グループの潮汐データを分析することによって、太陽引力と月引力により引き起す邱潮を分解して観測することができると予測できる。
 八丈島におき、上弦時の太陽邱潮は図408の満潮付近(a, c)に現われ、月邱潮は干潮付近(b, d)に現われると推測でき、一方、下弦時の太陽邱潮は図409の満潮付近(a', c')に現われ、月邱潮は干潮付近(b', d')に現われると推測できる。

太陽邱潮および月邱潮の挙動−上弦グループ
 図410に上弦グループにおける太陽、地球および月のおおよその位置関係を示す。冬至点前後のU-1では,太陽引力は地球赤道の南方23°に位置するが,月引力は地球赤道と平行する。次に,春分点前後のU-4では,月引力が地球赤道面の北方18°に移動して,太陽引力が赤道面と平行する角度に移動する。次に、夏至点前後のU-7では,太陽引力は地球の赤道の北方23°に移動し,月引力は地球赤道面と平行する角度へ移動する。最後に、秋分点前後のU-9では,月引力が地球赤道面の南方18°に移動して,太陽引力が赤道面と平行する角度に移動する。このパターンを毎年繰り返す。
図410 一年中12回の上弦における太陽、地球および月のおおよその位置関係説明図

 表403、図411, 図412に八丈島1997年の上弦グループにおける古典潮干潮であるd(朝方干潮)とb(夕方干潮)、古典潮満潮であるa(正午満潮)とc(午夜満潮)の水位の年間変化を示す。
 古典潮満潮の変化としては、地球のa点(正午満潮)の水位が、1月16日(水位が123cm)から下がり、4月15日に最低(水位が109cm)となった。その後は徐々に上がり、12月8日に水位が130cmまで回復した。一方、c点(午夜満潮)におき、1月16日(水位が95)から水位が上昇し、7月13日に最高(水位が146cm)となった。その後は徐々に下がり、11月30日に水位が109cmまで下がる。また、毎日二回の満潮水位の差が1月16日に最大値(28cm)となり、7月13日に最小値(-26cm)となることが分かった。

表403 上弦の潮汐水位変化(八丈島)
     
水位 (cm)
 
古典潮満潮
古典潮干潮
日付

正午

午夜

満潮差

朝方

夕方

干潮差

第1上弦(U-1) Jan. 16 123 95 28 54 55 -1
第2上弦(U-2) Feb. 14 118 91 27 59 41 18
第3上弦(U-3) Mar. 16 112 92 20 81 38 43
第4上弦(U-4) Apr. 15 109 108 1 98 47 51
第5上弦(U-5) May. 14 119 126 -7 105 56 49
第6上弦(U-6) Jun. 13 120 141 -21 103 73 30
第7上弦(U-7) Jul. 13 120 146 -26 90 90 0
第8上弦(U-8) Aug. 11 121 144 -23 75 93 -18
第9上弦(U-9) Sep. 10 118 134 -16 56 107 -51
第10上弦(U-10) Oct. 9 122 127 -5 41 107 -66
第11上弦(U-11) Nov. 8 129 113 16 40 107 -67
第12上弦(U-12) Dec. 8 130 109 21 36 83 -47
図411 上弦の潮汐水位変化(八丈島)
図412 上弦の年間満潮、干潮水位差の変化(八丈島)

 図401に示すように、夏至点前後におかれる地球の環境では,太陽の延径効果による地面の上昇区域(すなわち太陽邱潮の干潮区域)は,北半球の正午ゾーン海域と南半球の午夜ゾーン海域であり、冬至点前後では,太陽の延径効果による地面の上昇区域は,北半球の午夜ゾーン海域と南半球の正午ゾーン海域であるため、表403に示したように、夏至点前後(7月13日) におき、正午満潮(水位が120cm)が午夜満潮(水位が146cm)より26cm低く、逆に、冬至点前後 (1月16日)におき、正午満潮(水位が123cm)が午夜満潮(水位が95cm)より28cm高い、図412に八丈島におきる上弦グループの日間満潮、日間干潮水位差の変化を示す。日間満潮水位差は太陽引力により発生した延長効果を表す邱潮現象に対応することがわかる。これは前に分析した新月グループと満月グループの太陽邱潮の変化特徴とまったく同じである。
 よって,上弦時の昼夜両満潮の変化特徴は太陽引力により引き起こす地球の延径効果の研究に応用できると思われる。
図401 太陽邱潮説明図

 一方、干潮の変化としては、地球のd点(朝方干潮)の水位が、1月16日(水位が54cm)から上昇し、5月14日に最高(水位が105cm)となった。その後は徐々に下がり、12月8日に水位が36cmまで回復した。一方、b点(夕方干潮)におき、1月16日(水位が55cm)、から水位が下降し、3月16日に一旦最低値(水位が38cm)となり、その後水位が徐々に上昇し、10月9日に水位が107cmまで上がり、その後水位が再び下がり、12月8日に83cmになった。また、毎日二回の干潮水位の差が4月15日に最大値(51cm)となり、11月8日に最小値(-67cm)となることが分かった。

 図413に示すように、春分点前後におかれる地球の環境では,月の延径効果による地面の上昇区域(すなわち月邱潮の干潮区域)は,南半球の朝方ゾーン海域と北半球の夕方ゾーン海域であり,秋分点前後(図414)では,月の延径効果による地面の上昇区域は,南半球の夕方ゾーン海域と北半球の朝方ゾーン海域であるため,表403に示したように、春分点前後(4月15日)におき、朝方干潮(水位が98cm)が夕方干潮(水位が47cm)より51cm高く、逆に、秋分点前後 (11月8日)におき、朝方干潮(水位が40cm)が夕方干潮(水位が107cm)より57cm低い、図412に八丈島におきる上弦グループの日間満潮、日間干潮水位差の変化を示す。日間干潮水位差は月引力により発生した延長効果を表す邱潮現象に対応することがわかる。
 よって,上弦時の朝夕両干潮の変化特徴は月引力により引き起こす地球の延径効果の推論と一致した。

図413 月邱潮の説明図−春分点 図414 月邱潮の説明図−秋分点


太陽邱潮および月邱潮の挙動−下弦グループ
 図415に下弦グループにおける太陽、地球および月のおおよその位置関係を示した。冬至点前後のL-1では,太陽引力は地球の赤道の南方23°に位置するが,月引力は地球赤道と平行する。次に,春分前後のL-4では,月引力が地球赤道面の南方18°に移動して,太陽引力が赤道面と平行する角度に移動した。次に、夏至点前後のL-7では,太陽引力は更に地球の赤道の北方23°に移動し,月引力は地球赤道面と平行する角度へ移動した。最後に、秋分前後のL-10では,月引力が更に地球赤道面の北方18°に移動して,太陽引力が赤道面と平行する角度に移動した。このパターンを毎年繰り返す。
図415 一年中12回の下弦における太陽、地球および月のおおよその位置関係説明図
 表402、図416, 図417に八丈島1997年の下弦グループにおける古典潮干潮であるd'(朝方干潮)とb'(夕方干潮)、古典潮満潮であるa'(正午満潮)とc'(午夜満潮)の水位の年間変化を示す。
表404 下弦の潮汐水位変化(八丈島)
     
水位 (cm)
 
古典潮満潮
古典潮干潮
日付

正午

午夜

満潮差

朝方

夕方

干潮差

第1下弦(L-1) Feb. 1 113 88 25 60 45 15
第2下弦(L-2) Mar. 2 113 90 23 63 32 31
第3下弦(L-3) Apr. 1 112 106 6 86 29 57
第4下弦(L-4) Apr. 30 119 124 -5 96 37 59
第5下弦(L-5) May. 29 128 142 -14 100 51 49
第6下弦(L-6) Jun. 27 135 153 -18 95 66 29
第7下弦(L-7) Jul. 27 126 151 -25 76 98 -22
第8下弦(L-8) Aug. 25 124 144 -20 61 106 -45
第9下弦(L-9) Sep. 23 124 136 -12 47 110 -63
第10下弦(L-10) Oct. 23 124 118 6 47 113 -66
第11下弦(L-11) Nov. 22 125 104 21 52 97 -45
第12下弦(L-12) Dec. 22 122 95 27 55 77 -22
図416 下弦の潮汐水位変化(八丈島)

 古典潮満潮の変化としては、地球のa'点(正午満潮)の水位にはっきりした変化がないが、c'点(午夜満潮)におき、2月1日(水位が88)から水位が上昇し、7月27日に最高(水位が153cm)となった。その後は徐々に下がり、12月22日に水位が95cmまで下がる。また、毎日昼夜二回の古典潮満潮水位の差が12月22日に最大値(27cm)となり、7月27日に最小値(-25cm)と成ることが分かった。

図417 下弦の年間満潮、干潮水位差の変化(八丈島)

 図401に示すように、夏至点前後におかれる地球の環境では,太陽の延径効果による地面の上昇区域(すなわち太陽邱潮の干潮区域)は,北半球の正午ゾーン海域と南半球の午夜ゾーン海域であり、冬至点前後では,太陽の延径効果による地面の上昇区域は,北半球の午夜ゾーン海域と南半球の正午ゾーン海域であるため、表404に示したように、夏至点前後(7月27日) におき、正午満潮(水位が126cm)が午夜満潮(水位が151cm)より25cm低く、逆に、冬至点前後 (12月22日)におき、正午満潮(水位が122cm)が午夜満潮(水位が95cm)より27cm高い、図417に八丈島におきる上弦グループの日間満潮、日間干潮水位差の変化を示す。日間満潮水位差は太陽引力により発生した延長効果を表す邱潮現象に対応することがわかる。これは前に分析した新月グループと満月グループ、そして上弦グループの太陽邱潮の変化特徴とまったく同じである。
 よって,下弦時の昼夜両満潮の変化特徴も太陽引力により引き起こす地球の延径効果の研究に応用できると思われる。

図401 太陽邱潮説明図

 また、干潮の変化としては、地球のd'点(朝方干潮)の水位が、2月1日(水位が60cm)から、水位が上昇し、5月29日に最高(水位が100cm)となった。その後は徐々に下がり、9月23日に水位が最低の47cmまで下がり、その後水位が再び上昇し、12月22日に55cmに回復した。一方、b'点(夕方干潮)におき、2月1日(水位が45cm)、から水位が下降し、4月1日に一旦最低値(水位が29cm)となり、その後水位が徐々に上昇し、10月23日に水位が113cmまで上がり、その後水位が再び下がり、12月8日に77cmになった。また、毎日二回の干潮水位の差が4月30日に最大値(59cm)となり、10月23日に最小値(-66cm)と成ることが分かった。

図413 月邱潮の説明図−春分点 図414 月邱潮の説明図−秋分点

 図413, 図414に示すように、春分点前後におかれる地球の環境では,月の延径効果による地面の上昇区域(すなわち月邱潮の干潮区域)は,南半球の朝方ゾーン海域と北半球の夕方ゾーン海域であり、秋分点前後では,月の延径効果による地面の上昇区域は,南半球の夕方ゾーン海域と北半球の朝方ゾーン海域であるため,図417に示してように、古典潮干潮の朝夕差が最大値 (59 cm)の春分値点前後のL-4 (4月30日)と,最小値 (-66 cm) である秋分点前後のL-10 (10月23日) の間に変動する。これも上弦時で推測した結果と一致した。
 よって,下弦時の朝夕両干潮の変化特徴は月引力により引き起こす地球の延径効果の推論と一致した。

前のページ | 次のページ

当サイトに関する最新情報をインターネットHTML方式メールマガジンを通して,配信しています。興味のある方は,今すぐ登録して下さい。
■メールマガジン・アドレス登録メールアドレス(半角):
■メールマガジン・アドレス削除メールアドレス(半角):
Copyright (C) 2000-2004, Guoning Qiu. All rights reserved.
当論文は2000年11月15日付けで日本国文化庁にて第一公開年月日の登録を行いました。(登録番号 第17591号の1 )
このページに関する問い合わせは guoningqiu@aol.com まで