プリンキピア続編>陽電子−中性子仮説(同重体理論)>序章 問題点の導入
「陽子ー中性子説」のミステリー
約1世紀前、ラザフォードラザフォード(Ernest Rutherford, 英, 1871-1937)とキュリー夫人(Marie
Curie, 仏, 1867-1934)達はα粒子や陽子、重粒子などを加速して、いろいろな原子核を攻撃して新元素の合成実験を繰り返していた。世界各地に加速器が建設され、そして、より強力で速い加速粒子を作り出すため、加速器の規模もしだいに巨大化へと進化し続けた。ところが、原子核の壁は厚かった。一連の実験は正電荷を持つ加速粒子は安易に原子核に入ることができないと突き止め、アルファ散乱現象の発見にとどまった。
「陽子ー中性子説」によると、原子核に陽子と中性子(核子)の粒子達が集まってできいている。「中間子理論」はある程度中性子のことを解決したとしても、「斥力を持つ陽子同士がなぜ原子核に集まるのか、陽子が集まった原子核はなぜ安定するのか」についてはどうしても説得力のある解釈には至らなかった。
一方、中間子に関わる核力の研究は数学の分野で大量の計算より複雑化し始めた。実験も設備もいらないため、数学者たちは相次ぎペンを紙に走らせ、いろいろな仮定を想定した上で計算式を組み立てては演算し、そして、そこから得られた結果を基に、更に次の計算の根拠として演算を始める。このように作業を長い時間をかけて、演算を繰り返すことにより、数学上での核力はようやく完成されるようになった。この核力はまさに新型の王様の新装のように現れ、賢い人しか見ることができないものである。しかし、今回の新装はちょっと違う、あまりにも巧妙に組み込まれているので、本当かどうかは検証しようがないため反論しようがない。納得しなくでも屈服して黙るしかできない。このように数学上の核力は「ワザアリ」で科学の殿堂に堂々と登場するようになった。ここで計算より得られた数学上の核力の実態について少し詳しく説明する。
核力とは核子が持つ特別な性質であり、離れた粒子の間では現われないものの、粒子同士が非常に接近すると急に現われるようような仕組みとなっている。言い換えれば、核力は核子とそのすぐとなりの核子との間には存在するが、となりのとなりの粒子では存在しない。では、陽子のとなりのとなりが陽子であった場合はどうなのか。
一応、隣接の核子間の核力が非常に高く、陽子同士のクーロン力による極めて高い斥力(粒子間距離の二乗に反比例する)を上回って、陽子同士を同じ原子核に束縛することさえできる。そして、ついに、一部の学者は原子核(厳密に言えば核力によって結合した両核子の間)に「核力の障壁」というものが存在すると考え始めるようになった。
つまり、なぜアルファ粒子が原子核の中に簡単に入れなく、そして、なぜ原子核は安定するかについて、原子核の外部と内部とでは、「核力の障壁」という高い壁(関税だと理解した方が分かりやすい)が存在することによるものだと説明する。ちなみにこの「障壁」とはエネルギー準位のことである。(核子を輸出入の時の高い関税だと理解した方がもっと分かりやすい。)
核子は原子核から外に飛び出し、或いは外から原子核へ進入するにはこの「核力の障壁」を越えるエネルギーを持つことが条件とされている。分かりやすく説明すれば、核子達は弾力を持つゴムのカッセルみたいのようなもの(障壁)に綴じ込まれて、核内の核子は外へ飛び出したくても、外部の核子達が核内に入りたくても、この「核力の障壁」によって跳ね返される。そのため、原子核の中の世界と外の世界はこの「核力の障壁」のルールによって隔離されるわけである(高い税金を設けて国内の産業を守るのと同じように、高い関税を払えなければ輸入も輸出もできない仕組み!)。
「核力の障壁」よると、大きいエレルギーを持つ核子は、「核力の障壁」を突き抜け外から原子核に入り、或いは原子核から抜け出すことができる。ここまではなんとなくうまく説明できたと拍手を送りたいと思いきや、トンネル効果という実験結果に矛盾し、数学者達は科学の限界を感じさせ始めた。
つまり、実際では「核力の障壁」を越えるエネルギーを得なくでも、核子は原子核から出ていくこと(高い税金を払わなくても輸出入可能)もあること。これを「トンネル効果」(密輸出入現象?)という。高い「核力の障壁」に実はトンネルといった抜け道があるという、いかにも人間らしい発想(税関を通さなければ税金も払う必要がない)による便利的な仮説も出されていて、一昔では非難されがちな学説でも、科学の限界を感じた科学者たちは何でも有りとの心持ち方へと切り替え、理解できないものに関しても「ワザアリ」と判定するようになった。今では更におなじみに何の抵抗もなく一般的に受け入れられている。しかし、「核力の障壁」と「トンネル効果」の実体とは果たしてどんなものなのか。
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